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情報組織化研究グループ月例研究会報告(2021.10)

「図書館情報学文献目録BIBLIS PLUSの構築について」

伊藤民雄氏(実践女子大学図書館)


日時:
2021年10月23日(土)14:30〜16:15
会場:
(Zoomミーティング)
発表者:
伊藤民雄氏(実践女子大学図書館)
テーマ:
「図書館情報学文献目録BIBLIS PLUSの構築について」
出席者:
荒木のりこ(大阪大学)、井上 昌彦(関西学院大学)、今野創祐(京都大学)、江上敏哲(国際日本文化研究センター)、江草由佳(国立教育政策研究所)、岡田大輔(相愛大学)、佐藤久美子、佐藤毅彦(甲南女子大学)、塩見橘子、柴田正美(三重大学名誉教授)、鈴木学(日本女子大学図書館)、高久雅生(筑波大学)、中道弘和(堺市立図書館)、中村健(大阪市立大学)、中村恵信(元神戸松蔭女子学院大学)、福田一史(大阪国際工科専門職大学)、藤倉恵一(文教大学越谷図書館)、前川敦子(富山大学附属図書館)、水谷長志(跡見学園女子大学)、光富健一(情報科学技術協会)、村上幸二(神戸松蔭女子学院大学)、森原久美子、家禰淳一(愛知大学)、和中幹雄、他7名、伊藤<32名>

1.はじめに

 まず初めに情報組織化研究グループ9月月例研究会の続報として、毛利宮彦関連の資料の紹介があった。本題に入り、発表者の自己紹介と研究テーマである「分類」「学術流通のニッチな改善」、続いてBIBLIS PLUS(図書館情報学文献目録データベース)の概要紹介があった。2015年に停止した日本図書館情報学会の「BIBLIS for Web」を収録・再公開したものであること(「BIBLIS for Web」は1991年から2006年までをカバー)、上記に加えて、明治期から現在まで、図書館情報学分野主要誌を対象に、以下のような遡及戦略がとられている。

 検索システムは、NEC E‐Cats Library Systemのオプションであるjunii2対応メタデータ・データベースが利用されている。junii2形式で他システムとデータ交換可能だがこの機能は未使用である。大学図書館関係のシステムやDBとの連携を想定してNCIDを付与している。データ登録は、1件1件の登録も可能だが基本は一括登録で更新・削除をおこなっている。
 権利問題に関しては、私立大学図書館協会の研究助成で遡及入力を行った『全国短期大学紀要論文索引』の遡及入力(データベース化)時に、職場の顧問弁護士に確認し、主題(件名)が付与された冊子体、データベースについては「編集著作物」として、個々の著作者に許諾を取るようにし、書誌データ1点1点に「典拠」と「権利者」を記述している。

2.データベース構築に辿り着くまで

 データベース構築は、発表者の大学院修了後に強く感じた図書館情報学と出版学の主要誌や既存の図書館情報学文献ツール(書誌、索引、目録類)の知識・情報不足への反省が契機となっている。但し在学時に発表者が求めていた事実確認や研究素材探しについては、『図書館情報学研究文献要覧』や『国立国会図書館雑誌記事索引』(CiNii Articles)よりは、むしろ彙報、会報、コラムを含む目次詳細が提供される『国立国会図書館デジタルコレクション』の方が利用に叶うものであることが述べられている。
 一方で大学院での学びを通じ、他人の研究発表の質疑応答の場で教員・研究者による「先行研究をよく調べなさい」という指摘について、研究者として「自分で調べるべきだ」という思いより、「調査用データベースの未整備から起こっているのでは?」という図書館員としての疑問が生じたとのことである。

3.問題提起

 仮に研究者として研究を継続するとしたとき、発表者は自身に欠けている知識・情報を補完する「打ち出の小槌」が必要だと考えたという。それは研究論文だけでなく、事実確認、ネタ探し、素材探しができる文献リスト、データベースであり、芋蔓方式で現在から過去に遡るのではなく、物事の過去における起点から調査可能にするものである。先ず思いついたのは日本図書館情報学会の「BIBLIS for Web」の再開であり、2019年3月24日に同会会長に相談したとのことである。データベースは2019年7月19日に発注し、同年8月2日に構築を完了した。しかし、本格的に動き出すのは2020年が明けてからであった。

4.データベース構築の途中経過

 2020年の1月から3月にかけて、日本私立大学協会『図書館学文献目録』に始まり、「90年代・出版関係雑誌文献目録(稿)」、Windows7まで動作する『図書館雑誌総索引CD-ROM版』、『図書館界CD-ROM』収録の索引ファイル、慶應義塾大学メディアセンター『八角塔・KULIC 記事索引 ; 広報・KUCC 記事索引』、国公私立大学図書館協会『大学図書館研究総索引』、国立国会図書館 「カレントアウェアネス総索引等」、渡邊隆弘氏「情報組織化関連記事一覧」の利用許諾申請が立て続けに行われた。
 同年の4月から6月にかけて、全国の古書店から図書館情報学関係の雑誌総目次・総索引をかき集め、同じ頃に日本図書館情報学会に「図書館学会年報総目次・総索引」「BIBLIS for Web」の利用申請を行った。また、戦前期の青年図書館員聯盟の『図書館研究』の全号の目次をコピーして、彙報・書評・広告まで入力し、総索引を利用して、論文に件名を付与した。『図書館雑誌総索引CD-ROM』から全記事抽出に成功し日本図書館協会に報告、同時に『現代の図書館』索引、図書館年鑑』図書館関係資料目次集成の利用許諾を申請した。また、知識が不足していた図書館情報学文献の書誌・索引類の把握を行ったという。
 戦前期に目を向け、『図書館学関係文献目録集成−明治・大正・昭和前期編』(金沢文圃閣 2000)から、寄稿していた深井人詩氏の解説に天野敬太郎が索引作成時に留意していた主要11誌の情報が得られ、誌名、出版期間、初号と最終号、紙+電子復刻、総目次、総索引を一覧した所、全てを駆使すれば短時間で遡及入力が可能であると確信した。戦後についても、表を作成することで無駄な作業を排除するように努めたという。
 同年の7月から翌年の3月にかけて、日本書誌学会「書誌学」の目次入力開始(旧字と書誌学の知識不足から最も負担の大きな作業であった)、情報科学技術協会「ドクメンテ−ション研究総索引」、金子寛氏・山家路子氏『市立図書館と其事業−総目次・総索引』と『 『ひびや』・『都立図書館報』・『とりつたま』 : 総目次・総索引 』、児童図書館研究会『年鑑/年報 こどもの図書館』に収録されている「 児童図書館関係文献目録 」(1950〜1980)、全国学校図書館協議会『学校図書館』等の総索引、アート・ドキュメンテーション学会「JADS文献目録」の許諾を取得した。同時に、戦前・戦後期の図書・読書指導の遡及入力を行った。
 データ入力は、国会デジタル、J-STAGE、Medical*Online等、既存のテキストデータを使うこととした。また、OCRでテキスト化した。旧字が多い資料など、紙索引・目次をゼロから手入力したものもあった。紙索引の明らかな記述ミスについては、現物、別索引、国会デジタル等を使い訂正した。「件名」付与については利用許諾を取った資料を利用するが、書誌データと索引データを別々に作り、共通キーで照合したものもあった。また、所属図書館での未所蔵資料は、東京都立多摩図書館、JLA図書館など、必要に応じて図書館を訪問した。充足できない場合は、該当資料所蔵館の友人に依頼することもあった。

5.隠れた名書誌の再発見と既存ツールへの精通

 作業する中で、隠れた名書誌・索引・目録類の再発見があった。特に『東京の図書館に関する文献年表(稿)明治5年-昭和20年』(許諾済、未登録)については、よく調べたという驚きがあり、また『雑誌記事索引』の1948〜1974年を再編集した『文化行政・法制・図書館に関する27年間の雑誌文献目録』(日外アソシエーツ、未許諾)については、雑索(CiNii)でできない主題検索が可能であるという点から利用価値を見いだした。興味深い文献の発見もあった。
 一方で、既存ツールに精通するように努めた。例えば『図書館学文献目録』(日本私立大学協会, 1971)は「大学図書館と専門図書館を中心とする論文記事の目録とその索引」で構成されている。つまり公共図書館や学校/児童図書館関係文献は含まれない。また、『図書館情報学研究文献要覧』(日外アソシエーツ, 1983)についても、”ドキュメンテーション”の分野、また旧来の”読書””読書指導””書誌学”分野のもので直接現在の図書館業務に密接しないものは省略しているという点で収録範囲に限界があった。そこから新たな遡及入力の課題を発見するとともに、「教育と図書館」のような関連情報を多く含む『教育研究論文索引』等の情報を追加していくとのことである。ただ、作業は遅れ気味であるとのことだ。

6.今後に向けて

 今後の展開としては、『図書館員のための図書館情報学文献の検索(仮)』を題材に、本を書くとのことである。過去の文献において「ドキュメン屋のドキュメン知らず」、「紺屋の白袴」という言葉で指摘されたように、図書館員自身は「図書館情報学文献の調べ方をほとんど知らない」ことに気付いていない。この種の本は、『図書館学・情報科学文献の検索』(国立国会図書館, 1983)以後出版されておらず、その続編的位置付けとし、日本や欧米のみならず、日本への留学生も多い中国、台湾、韓国も対象とし、50種の紙索引とデータベースを取り上げることになるだろう。その内容については一部、パスファインダーとしてまとめ始まっている。https://jissen.libguides.com/
 以上の発表を受けて、自分たちに手伝えることはあるか、NDLサーチと連携する予定はあるか、図書館友の会の刊行物を採録対象とする予定はあるか、文献管理ツールへの取り込みのため、何らかの形式で出力できるようにならないか等の質疑があった。

なお、今回の月例研究会については、Zoomの映像を録画し、開催後一週間に限り、出席を申し込んだものの欠席された方にも、映像を配信した。

(記録文責:今野創祐)