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情報組織化研究グループ月例研究会報告(2022.01)

「新たな図書館システム・ネットワークにおけるメタデータ:共同利用システムをめぐる様相」

飯野勝則氏(佛教大学図書館)


日時:
2022年1月22日(土)14:30〜16:00
会場:
(Zoomミーティング)
発表者:
飯野勝則氏(佛教大学図書館)
テーマ:
「新たな図書館システム・ネットワークにおけるメタデータ:共同利用システムをめぐる様相」
出席者:
荒木のりこ(大阪大学附属図書館)、石村早紀(株式会社樹村房)、伊藤民雄(実践女子大学図書館)、伊藤真理(愛知淑徳大学)、今野創祐(京都大学)、上野貴史(図書館スタッフ(株))、牛尾響(国立国会図書館)、浦部幹資、岡田智佳子、小野亘(東京大学駒場図書館)、川崎安子(武庫川女子大学)、黒田茂(丸善雄松堂株式会社京都支店)、小山荘太郎(三重大学国際・情報部)、篠田麻美(国立国会図書館)、柴田正美(三重大学名誉教授)、高野真理子(IAAL)、高橋克志、高畑悦子、徳原靖浩(東京大学附属図書館)、中道弘和(堺市立図書館)、中村健(大阪市立大学)、Noboru Jimba(丸善雄松堂株式会社)、平山永一(紀伊國屋書店)、別府征(丸善雄松堂株式会社)、松井純子(大阪芸術大学)、村岡和彦、山本知子、山本宗由(愛知学院大学)、渡邊隆弘(帝塚山学院大学)、和中幹雄、他16名、飯野<47名>

1. はじめに

「図書館システム・ネットワーク」は,国立情報学研究所が中心となって整備をする,大学図書館等が共同で利用する「共同利用システム」と,それら大学図書館等が各自利用する「図書館システム」によって構成されるネットワークのことである。「共同利用システム」に位置づけられるシステムとしては,かねてよりNACSIS-CAT/ILLやIRDBなどが存在していたが,新たに「電子リソースデータ共有サービス」が追加で供用されることとなった。このサービスの基盤は,Ex LibrisのAlmaによって構築されている。また,国際標準への対応を前提とし,NACSIS-CAT/ILLは基盤となるシステムを置き換えることが計画されており,こちらはOCLCのCBSが,その任を担うこととなっている。 

2. 図書館システム・ネットワークが扱う資料

図書館システム・ネットワークが扱う資料は,図書館に由来する以下の3種類がスコープとして設定されている。すなわち,(1)「紙」の図書に代表される「物理的な資料」,(2)「電子ブック」に代表される「電子的な資料」,そして(3)図書館でメディア変換を介し,デジタル化を行った「デジタルな資料」である。

2.1 「物理的な資料」のシステムとメタデータ

新たなNACSIS-CAT/ILLでは,現行のNACSIS-CAT/ILL の機能を当面維持することとされており,移行に際し,現行の参加機関が利用する図書館システムとの接続方法などに変更はない。一方で,移行後のシステムでは,CBSを基盤としていることから,内部では書誌データをMARC21に準拠したフォーマットで扱う仕様となっている。 CBSは,RDAや「日本目録規則2018年度版」(NCR2018)のほか,BIBFRAME等への対応も可能となっており,国外諸機関などとの間での書誌データ流通等が,より効率的になることが期待されている。なおNCR2018については,相互運用性を高め,エンドユーザーにとってもわかりやすい目録を実現できることを踏まえ,適用に向けての作業を行っている。現在は,和図書等に係る適用細則案の作成を進めており,これから委員会での審議を経たのちに公開を予定している。

2.2.「電子的な資料」のシステムとメタデータ

電子リソースデータ共有サービスは,『これからの学術情報システムの在り方について(2019)』において示されている,電子情報資源の効率的なワークフロー実現のために必要な「契約パッケージに含まれるタイトルリストやライセンス情報等の各機関共通のデータを共有できるシステム」を具現化したものである。すなわち,国内外の出版社・学会等から大学図書館コンソーシアム連合 (JUSTICE)に提出された電子リソース製品の利用条件やタイトルリスト等,共通性の高いデータを蓄積し,公開許諾が得られたデータを各機関の図書館システムで共有するための仕組みであり,2022年度よりライセンス情報について,試験的に供用を始める予定である。ライセンス情報を共有することで,図書館システムを通じて,ライセンスを適切に開示することで,利用者のライセンス違反を防ぐことができるほか,図書館として,自らが有するアクセス権の内容を正確に把握できるようになるなど,物理的な資料と同様の資産管理や財産管理が実現できるようになる。加えてタイトルリストを共有できるようになれば,各図書館ではJUSTICEパッケージのナレッジベース(タイトルとアクセス可能な年次,URLなどを組み合わせたデータベース)等を構築することができるようになり,OpenURLと組み合わせることで,JUSTICEパッケージに対応するリンクリゾルバとして機能させることなどが可能になる。これにより,さまざまなデータベースの論文メタデータから全文リソースへと効率に誘導する仕組みを,各図書館の購読状況に合わせる形で,構築できるようになる。

2.2.1. 電子リソースデータ共有サービスの「次」

将来的には,電子リソースデータ共有サービスを発展させ,電子ブックの総合目録を構築することや,電子ブックのチャプターなどのマイクロコンテンツをレコード化し,可視化することを検討している。

2.3.「デジタルな資料」のシステムとメタデータ

共同利用システムを構成するIRDBが,大学などの学術機関のデジタルアーカイブと,ジャパンサーチを結ぶ,主要な「つなぎ役」となることを前提として,流通経路やデータ交換形式について,国立国会図書館やJCOARなどと調整を進めている。メタデータに関しては,これからの学術情報システム構築検討委員会が,何らかのスキーマ設計を行うといったことは考えていないが,「つなぎ役」のシステムを構築しようとする立場から,一定の意見表明を行っている。

3. これからの学術情報システム構築検討委員会とメタデータ

これからの学術情報システム構築検討委員会の傘下にあるシステムワークフロー検討作業部会では,「システム」での適用を前提とするメタデータの在り方について,「デジタルな資料」のみならず,「物理的な資料」,「電子的な資料」についても,一定の見解をまとめつつあり,委員会の審議を経たのちに公開する予定である。

4. 共同利用システムとそのメタデータが持つ可能性

共同利用システムが各参加館に対して個別のインスタンス(検索画面)を用意することで,最終的には多様なメタデータを統合的に検索するウェブスケール・ディスカバリ・サービスを実現できる可能性もある。

以上の発表を受けて,研究に由来するデータの扱いをどうするのか等の質疑があった。 なお,今回の月例研究会については,Zoomの映像を録画し,開催後一週間に限り,出席を申し込んだものの欠席された方にも,映像を配信した。

(記録文責:飯野勝則)