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情報組織化研究グループ月例研究会報告(2023.2)

「アーカイブズ記述アプリケーション「AtoM」導入の過程:エル・ライブラリーの事例から」

谷合佳代子氏(エル・ライブラリ―(大阪産業労働資料館)館長)


日時:
2023年2月25日(土)14:30〜16:00
会場:
(Zoomミーティング)
発表者:
谷合佳代子氏(エル・ライブラリ―(大阪産業労働資料館)館長)
テーマ:
アーカイブズ記述アプリケーション「AtoM」導入の過程:エル・ライブラリーの事例から
出席者:荒木のりこ(大阪大学附属図書館)、岩下格、上野芳重、元ナミ(東京大学文書館)、鏑木あづさ、久保庭萌(大磯町郷土資料館)、久保誠(国際基督教大学図書館)、佐藤久美子(国立国会図書館)、塩見橘子、下田尊久、下山朋幸(国立精神・神経医療研究センター図書館)、高久雅生(筑波大学)、田窪直規(近畿大学)、谷口英理(独立行政法人国立美術館)、谷口祥一(慶應義塾大学文学部)、千本沢子(エル・ライブラリー)、徳原靖浩(東京大学附属図書館U-PARL)、中道弘和(堺市立図書館)、西田紀子(国立国際美術館)、橋本陽(京都大学大学文書館)、前川和子(桃山学院大学大学院特別研究員)、松永しのぶ(国立国会図書館)、萬谷衣加(獨協大学)、水谷長志(跡見学園女子大学)、森井雅人(エル・ライブラリー)、森本祥子(東京大学文書館)、山田之恵(藤沢市文書館)、山永尚美(学習院大学)、渡邊隆弘(帝塚山学院大学)、和中幹雄、他8名、谷合<39名>

図書館の書誌とは異なり、アーカイブズ記述には、フォンド>サブフォンド>シリーズ>ファイル>アイテムといった複雑な階層構造があることが特徴で、その構造は資料によって異なる。アーカイブズ記述は、国際アーカイブズ評議会(ICA)が策定したISAD (G)・ISAAR(CPF)・ISDF・ISDIAH という4つの国際標準に基づいているが、2016年には新標準であるRiC(Records in Contexts)の予備版が公開された。RiCは、4つの国際標準を統合して、実体関連分析を導入して抽象化したもので、これを用いれば、資料と資料の関係や資料と作成者の関係を表現することができるようになる。改訂を経た正式版が2023年に公開される予定である。AtoM(Access to Memory)は、上記の4つの国際標準に基づいて資料データを登録するために提供されているオープンソフトウェアである。

エル・ライブラリーは、図書資料だけでなく、博物館やアーカイブズで所蔵するような資料も所蔵している。それらは、図書館システムでは管理が難しいため、上述のAtoMを2019年より試験的に利用している(https://atom.log.osaka/)。AtoMの長所として、国際標準の知識がなくても入力ができること、どこの階層からでも記述できること、Webベースなのでどこからでも編集可能なこと、利用は無料であること、複数機関で同一サーバーを使って運用可能なこと等がある。短所としては、作成者の欄に記入したらどんな人物でも典拠データが作られてしまうこと、複数機関で使用する場合に権限を細かく分ける必要があること、日本語のマニュアルはないこと、サーバーを独自に立てる必要があること等がある。現在、エル・ライブラリー独自の記述細則を作成している最中である。カナダとアメリカのアーキビスト協会の規則(RAD・DACS)を参照し、不足分はNCR2018を適用した案に対して、RiCの項目と4つの国際標準の項目をマッピングしたうえで、不足分について図書館界の国際規則を参照するのはどうか(具体化する際にはNCR2018)、という検討を行っている。

今後の課題として、RiCに対応したAtoMの改訂版を待つかどうか、図書館とアーカイブズ界でAtoMのコミュニティを増やせないか、細則に関する勉強会を開催できないか、図書館目録・OPACとどのようにつないでいくか、という点が挙げられた。

以上の発表を受けて、フランス国立公文書館で開発されているRiC-O Converterを活用したRiCへの変換実験に関する情報提供があった。

なお、今回の月例研究会については、Zoomの映像を録画し、開催後一週間に限り、出席を申し込んだものの欠席された方にも、映像を配信した。

(記録文責:荒木のりこ)