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整理技術研究グループ月例研究会報告

メタデータ関係輪読会報告−RDFを中心として−

吉田暁史(帝塚山学院大学)


日時:
2000年12月16日(土) 14:30〜17:00
会場:
難波市民学習センター
発表者 :
吉田暁史氏(帝塚山学院大学)
テーマ :
メタデータ関係輪読会報告−RDFを中心として−
出席者:
倉橋英逸(関西大学)、堀池博巳(京大大型計算機センター)、村井正子(システムズ・デザイン)、蔭山久子(帝塚山大学学園前キャンパス図書館)、田窪直規(近畿大学)、太田智子(甲南学園)、渡辺隆弘(神戸大学図書館)、光斎重治(愛知大学)、笠井詠子(帝塚山学院大学)、浜田行弘(関西学院大学)、杉本節子(大阪市立大学学術情報総合センター)、吉岡肖治(大阪国際大学)、井谷明男(大阪国際女子大図書館)、吉田暁史

1.RDFとは
(1)定義
 Resource Description Frameworkの略で、W3Cの制定したメタデータを記述する枠組みを提供する規約。RDFでは、メタデータのプロパティを定義可能にし、異なるアプリケーション同士が、WWWを通じてデータの交換を行なえるようにする。このプロパティセットを利用することで、異なるアプリケーション間で人間が判別可能な状態でデータを交換したり、ソフトウェアが解釈可能な形でデータを交換したりできるようになる。現在RDFは、W3CのRDFワーキンググループにおいて仕様案の策定が進んでいる。W3Cの概要説明によれば、サイトマップやレーティング、ストリームチャンネルの定義、サーチエンジン、認証の発行などでRDFの技術が活かされるとしている。
(2)RDFの役割は何か
 WWW上の資源を効率よく検索するためには、全文検索だけでは不十分で、メタデータが必要である。このメタデータを相互に互換性のあるものにするために、記述方法の標準化が必要である。RDFはメタデータ記述のための共通の枠組みのみを提供する。メタデータの個々の記述要素の策定については、PICSやDublin Coreといった各スキーマが内容を取り決めることになる。RDFの役割は次のようなものがある(参考文献1参照)。
・WEBのリソース中に著作権や商標など、知的所有権に関する情報を統一して表示する。
・データそのものにもっと高度なラベルを付け、データアーカイブの検索をより正確に行う。
・可能であれば、複数の文書を単一の大きな文書としてまとめる。
・複数の文書を単一の大きな文書としてまとめる。
・文書とコンピュータ間に安全で信頼の高い関係を確立し、電子商取引だけでなく、考え方やリソースを相互に交換する。
(3)RDFの構文
 現状では、RDFのデータモデルはXMLを用いて記述することになっている。これによってRDFの記述式をXMLパーサで解析でき、XMLアプリケーションに渡せる(つまり汎用性・互換性のある処理が出来る)。しかしRDFはXMLでなければ記述できないわけではない。RDFは他の記述スタイルを用いることのできるような柔軟性を持っている。

2.RDFの実際
(1)データモデルとスキーマ
 RDFの仕様は、メタデータのデータモデルおよび構文と、スキーマに分けて定めれらている。構文に関しては、逐次形(直列化)構文と、短縮構文とに分かれる。構文におけるポイントは、descriptionとproperty要素である。前者は記述対象資源を、通常about属性によりURIを用いて特定する。ただし、about属性を持たない資源もありうる。その場合は、description要素は新しい資源を表現する。description要素中には、propertyElt要素を一つまたは複数個含み、これが具体的な記述要素となる(ISBDにおける記述要素のごとく)。一つのpropertyElt内では、特性の値を文字列で記載せずに、他の資源がこの特性の値であるとすることもできるが、その場合にはrosource属性を用いて記述する。
 特性名は、一つのスキーマと対応していなければならない。通常スキーマは名前空間機能を用いて指示される。
(2)名前空間
 高度なXML技術の一つで、PI(Processing Instruction)を利用してURIに一意の名前を文書中で割り当てるもの(文献1)。名前空間を利用すると、複数の文書全体で共通した名前付け方式が利用できるようになる。XMLでDTDを設計するとき、1つの大きなDTDを作成せず、論理的にモジュール化して複数のスキーマを選択して組み込むことが可能となる。
(3)RDFによる表現の実例
(4)コンテナ
 複数個の資源またはリテラルのリストを記述するときに、それらの間の順序関係などを表現する方法で以下の3種類の表記法がある。
・Bag     順序を問題にしないリスト
・Sequence   順序付きリスト
・Alternative リスト中のいずれか一つを選択する

3.RDFと図書館目録
・記述の柔軟性と論理性
・メタデータの表現に共通の枠組みを提供することによって、メタデータ流通の互換性が図られる。
・XML関係の汎用的アプリケーションソフトを用いて処理することができる。
・例えば、記述はダブリンコアを用い、統制された標目データはLCのName authorityやLC件名というように、それぞれ項目ごとにふさわしい書式を使い分けることができる。各々は名前空間機能を用いて個別に定義する。
・図書館におけるMARCの中味はどのMARCでもほぼISBDに準拠するが、入れ物としてのMARC書式そのものは、XML−RDF仕様によって記述することが今後標準となるかもしれない。MARC書式というローカルな仕様よりは、RDFという汎用性のある仕様の方がより望ましいと考えられる。
・名前空間機能を使うことによって、複数のスキーマを使用してメタデータを表現することができ、表現の自由度を上げることができる。例えば、あるネットワーク資源はダブリンコアを用い、ある図書はISBDを用いるといった具合である。メタデータ作成者に特定のスキーマを強制することなしに、いわば好き放題にメタデータを作成させても、全体として、資源の目録情報の把握は進捗する。
・しかし上記は両刃の剣であり、複数のスキーマ間で属性の対応関係が調整されないかぎり、同じ基準で共通の検索を行うこともできなければ、属性の意味合いを理解することもできない。最終的には、限られた少数のスキーマに収斂され、かつデータ間の対応関係が調整される必要があると思われる。
【参考文献】
1. Natanya Pitts‐Moultis, Cheryl Kirk著 ; 山本浩訳 『XML実践ガイド』アスキー, 1999.12. -- 2冊
2. XML/SGMLサロン著 『標準XML完全解説』技術評論社, 1998.5. -- 354p
3. 田畑孝一著 『ディジタル図書館』勉誠出版, 1999.10. -- 155p
4. 門馬敦仁 XMLとメタデータ 『情報の科学と技術』49(1), p.16-22, 1999.1
5. Resource Description Framework (RDF) Model and Syntax Specification
W3C Proposed Recommendation 05 January 1999
http://www.w3.org/TR/PR-rdf-syntax/
6. 資源記述の枠組み(RDF) モデル及び構文規定[上記の翻訳]
この標準情報(TR)は, 1999年2月にWorld Wide Web Consortium(W3C)から公表された Resource Description Framework (RDF) Model and Syntax Specification勧告を翻訳し, 技術的内容を変更することなく作成した標準情報(TR)である。
http://www.y-adagio.com/public/standards/tr_rdf_ms/rdfmain.htm
7. Resource Description Framework (RDF) Schema Specification 1.0
W3C Candidate Recommendation 27 March 2000
http://www.w3.org/TR/rdf-schema/
8. WEB関連 仕様類link集
http://world.uraru.net/~vette/misc/Internet-specs.html

◎例会終了後、難波・シシリアの赤い月で忘年会開催