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整理技術研究グループ月例研究会報告

共同分担目録システムにおける和漢古書

渡邊隆弘(神戸大学図書館)


日時:
2002年5月18日(土) 14:30〜17:00
会場:
神戸市立東灘区民センター
発表者 :
渡邊隆弘氏(神戸大学図書館)
テーマ :
共同分担目録システムにおける和漢古書
後援:
記録管理学会
出席者:
久保恭子(金蘭短大非常勤)、川崎秀子(佛教大学)、蔭山久子(帝塚山大学図書館)、中村健(大阪市大)、村井正子、浜田行弘(関西学院大学)、向畑久仁(姫路獨協大図書館)、井上晴美・高辻亜由美(奈良県立奈良図書館)、田窪直規(近畿大学)、河手太士(大阪樟蔭女子大図書館)、前川和子(堺女子短大)、堀池博巳(京大学術情報メディアセンター)、吉田暁史(帝塚山学院大学)、渡邊隆弘

1.はじめに
 共同分担目録システムNACSIS-CATにおいて、和漢古書の取扱いルールの必要性が起こってきた。そこでNIIでは「和漢古書に関する取扱い(案)及び解説」(2002.3.5公開)と「和漢古書に関するコーディングマニュアル(案)」(2002.4.23公開)を作成した。http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/INFO/kosho-atsukai.html
 和漢古書を取り扱う上での問題点は、(1)書誌レコードの共有と標準化、(2)検索と同定識別、(3)和漢書目録の伝統的記述となろう。
2.「取扱い」検討の経緯と基本的考え方
(1)「古籍の取扱い」に関する小委員会(平成12〜13年度)
 小委員会が宮澤彰主査の下に、国立国会図書館、国文学研究資料館、天理図書館を含め、各館からメンバーが選ばれ組織された。
(2)検討に当たっての基本的考え方
・近現代図書と同じデータベースに収録する。
・伝統的な和漢書目録のデジタル化をめざすものではない。
 和漢書では著作単位の目録がよくとられるが、そうではなく、単行書誌単位を基礎とする。
・一般的な(大学)図書館における遡及入力の助けとなるように。
 必要以上に厳格な規則は作らない。
・基本的にNCRをベースとして適用する。
(3)検討に当たって参照した主な規則(NCR以外)
・各機関の目録(データベース)作成規則
 国文学研究資料館、国立国会図書館、天理図書館、京大人文科学研究所
・中国の目録規則
 中国文献編目規則(大陸)、中国編目規則(台湾)(これらは古書に関して別章を設けている)
・各館のNACSIS-CAT登録内部マニュアル
(4)「取扱い」等の今後
 まだ「案」の段階であり、各機関からの意見聴取を経て正式に決定される。
3.「取扱い」各項目の紹介
 基本的にNCRと相違する点のみが記載されている。
(1)記述対象資料ごとの書誌レコードを作成する
 書誌レコードは共有しない。「版に関する事項」は不使用とする。
(2)適用の範囲
 和古書は1886年以前、漢籍は1912年以前のものに対して適用するが、若干の柔軟性を持たせている。
(3)書誌構造の扱い方
 書誌単位の扱いは、近現代図書と同じである。単行書誌単位あるいは集合書誌単位をもとにレコードを作成する。
(4)書誌的事項の情報源
 NCRでは巻頭第一主義であるが、それ以外の情報源に対する情報源に対しても配慮したものになっている。
(5)書誌的巻数の取扱い
 本タイトルの一部とし、本タイトルの後に1字空けて巻数を記載する。不完全本の場合は、完全巻数の後に現存巻数を( )に入れて補記する。
(6)書写事項・出版事項の取扱い
 書写事項は製作事項と見なし、自筆、転写にかかわらず、すべて記載する。
 出版年・書写年は、元号表記優先とし、不明の場合の扱いもNCRと異なる。
(7)記述対象資料に固有の特徴
 印記、書き入れ等は、注記に記載する。
4.典拠コントロール(統一タイトル)
 和漢古書においては、記述対象資料ごとに書誌レコードが作成されており、同じ著作であっても、別々の記述が作られることになる。したがって統一タイトルで著作をまとめる必要性が高いといえる。なお、国文学研究資料館の「国書基本データベース」では、著作、書誌、著者の3データベースが作られるが、著作レコードが基本としてこれら3つがリンクされている。書誌レコードは記述対象資料に限定され、著者は著作にリンクされている。
 一方、NCRでは統一タイトルの付与は、「無著者名古典、聖典および音楽作品」の範囲に限定される。NACSIS-CATの「目録情報の基準」では、中国語の古典作品に対しては、著者を有する古典作品にも拡大適用されていたが、和古書に対してもこの規定が適用されることになった。
 しかし、著者を有する古書にも統一タイトルが適用されると、主記入の問題に直面する。元の著作に種々の著者性が付け加わっているケースが多いので、著者を基本記入の標目とするかどうかの判断が困難となる場合がある。国文学研究資料館では基本記入を統一タイトルのみで表しており、これが和漢書の伝統でもあるが、この伝統との整合性の問題もある。
5.目録システムと和漢古書
(1)目録規則の前提としての「資料刊行形態」
 近代出版資料に依拠した記述規則をそのまま適用しがたい点が多々ある。多様な資料を包摂する目録規則がどうあるべきかを考える場合、複数の原理原則の併存が必要なのかもしれない。
(2)伝統的和漢書目録とNACSIS-CAT、OPAC
 国文学研究資料館や全国漢籍データベース協議会加盟館で、古典籍のデータベースが作られている。これらとNACSIS-CATとの連動を考えた場合、典拠コントロールが必須のものとなろう。