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整理技術研究グループ月例研究会報告

MODSの役割と動向

吉田暁史(帝塚山学院大学)


日時:
2004年3月27日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立浪速人権文化センター
発表者 :
吉田暁史氏(帝塚山学院大学)
テーマ :
MODSの役割と動向
出席者:
蔭山久子(帝塚山大図書館)、川崎秀子(佛教大)、河手太士(大阪樟蔭女子大図書館)、進藤達郎(京都大物理工学系図書室)、杉本節子(大阪市立大)、高橋晴子(大阪樟蔭女子大)、田窪直規(近畿大)、田中美也子(大阪経済大図書館)、谷口美代子、中村恵信(大阪府立大総合情報センター)、堀池博巳(京都大学術情報メディアセンター)、山野美贊子(大阪府立大総合情報センター)、渡邊隆弘(神戸大図書館)、吉田暁史

1.目録におけるセマンティックスとシンタックス

・セマンティックスには記述要素の定義と意味内容が、シンタックスには記述要素の記載順序、区切り記号、タグ付け等があてはまる。
・MARCは一見シンタックスを定めるものだが、実は書式がセマンティックスから独立していない。また固定長フィールドなど目録規則にはない独自のセマンティックス規定がなされており、「ダブルスタンダード」の状態にある。
・メタデータの世界で純粋にシンタックスを定めたものに、XMLを用いるRDFデータモデルがある。シンタックス部分は独自規定の必要性が少なく、W3C等で規定される標準仕様に合わせるのが望ましいと思われる。

2.MODS(Metadata Object Description Schema)の開発意図と特徴

・LCが、XMLの急速な普及を踏まえ、MARCのデータエレメントと意味構成を基本にして開発した2つのメタデータスキーマの1つである。MARCXMLがMARCデータそのままの忠実なXML表現を意図しているのに対し、MODSはデータ要素としてはMARCのサブセットであり、よりシンプルなものとしている。2002年に公式発表され、2003年12月のver.3が最新版である。
・MARCにおけるデータ要素のあまりの複雑さへの批判が背景になっている。
・開発者によれば、「MARC21のような複雑・詳細な形式から、DCのような簡易な形式まで対応できる」が、とりわけ「MARCレコードとの互換性が非常に高い」ことがその特徴とされている。

3.MODSの構造

・主要エレメント、サブエレメント、属性という3つの構造を持つ。いずれも、MARCタグのような数字ではなく、見て理解しやすい言語タグで示される。
・19の主要エレメントがあり、それぞれにサブエレメントが設けられている。記述と標目の区分は特にない。abstract(抄録)、tableOfContents(目次)、targetAudience(利用対象)といったMARCにはないエレメントを含む。
・主要エレメント、サブエレメントは、目録規則ほどではないが、簡単な定義付けをされている。
・各エレメントはそれぞれ特定の属性を持つことができる。全エレメントに有効な属性と各エレメントだけに有効な属性とがある。

4.MODSの特徴と評価

・データ要素の種類(セマンティックス)は、MARCとかなり整合性を持ち、それを簡略化したものである。しかしMARCに存在しないデータも存在するので、純粋なサブセットではない。
・タイトルと著者については、統一タイトル等の統制された標目情報も含みうる。転記の原則は必ずしも働かず、こういった伝統的図書館目録の表現様式はあまり意識していないようである。
・基本記入の著者標目を一番最初に位置づけるなど、MARCにおける目録時代の表示・印刷を意識した残滓はなくなっており、当然のことであるが機械処理を優先したフォーマットになっている。
・言語タグの使用は、MARCのような数字や記号よりはわかりやすいが、単なる記号と比べて本質的な違いがあるわけではない。
・特定の目録規則を想定していないとのことだが、MODS自体がゆるい目録規則を内蔵しており、目録規則中立とは必ずしもいえない。あくまで従来の目録規則の延長上にある。だからといって、単独で用いるにはセマンティックスが弱い。
・DCよりは格段に詳細で、図書館の扱うデータとの互換性も高い。
・MARC以外のメタデータ形式を含めて、図書館界における横断的メタデータを指向している。裏返せば、図書館界以外(例えば博物館)のメタデータが扱えるわけではない。
・書誌的関連性などにおいて、特に画期的な表現構造があるわけではない。
・エレメント−サブエレメント−属性によっって表現するというシンタックス面では、整合性や論理性にすぐれている。
・結論的には、MODSの存在意義はおそらく、図書館界において、MARCおよびMARC以外の種々のメタデータ(多くはMARCより簡略である)を横断的に取り込む受け皿としての役割にあるのであろう。つまりダブリンコアではあまりにもおおざっぱすぎるが、MODSくらいなら、まずまず従来の図書館資料とWeb情報資源の両方に対応できるだろうということである。
 現在のISBD(目録規則)とMARCの関係を捉えなおすならば、MARCそのものの、そしてその奥にある目録規則自体の改変が望まれる。1つは、セマンティックスとシンタックスの明確な分離である。ISBDもしくは目録規則はセマンティックス部分のみを十分に表現する。そしてシンタックス部分はXML化MARCが受け持つようにすべきであろう。
 2つ目はMARCの構造面ではなく、その奥にある目録規則そのものの改善であろう。現状のISBD等が十分に果たしていない、記述対象の論理的な把握、関連性の表現という面で改善が求められよう。
 以上の2つを実現し、かつ簡略化に対しては例えばMARC Lite的なものを設けて対応するならば、少なくとも図書館界における横断的メタデータの受け皿として、MODSのような存在を作る必要はなくなるかもしれない。
<LCにおけるMODSサイト>
http://www.loc.gov/standards/mods/
【参考文献】
・鹿島みづき MODS:図書館とメタデータに求められる新たな選択肢  『情報の科学と技術』 53(6), p.307-318, 2003
・Rebecca S. Guenther著 鹿島みづき訳 MODS:メタデータオブジェクトディスクリプションスキーマ http://www2.aasa.ac.jp/org/lib/
◎月例研究会終了後山野美贊子氏ご定年慰労会を開催しました。
山野氏(大阪府立大学総合情報センター)は、3月にご定年を迎えられました。
氏は、1980年当時整研の世話人を務めておられました。
日 時:3月27日(土)17時半〜20時半
会 場:阿倍野ベッリーノ
参 加:17名
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