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整理技術研究グループ月例研究会報告

最近における分類表の動向−DDC22版を中心として

吉田暁史(帝塚山学院大学)


日時:
2004年7月24日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立浪速人権文化センター4階会議室1
発表者 :
吉田暁史氏(帝塚山学院大学)
テーマ :
最近における分類表の動向−DDC22版を中心として−
出席者:
江上敏哲(京都大図書館)、蔭山久子(帝塚山大図書館)、川崎秀子(佛教大)、進藤達郎(京都大物理工学系図書室)、田窪直規(近畿大)、古川肇(近畿大学)、堀池博巳(京都大学術情報メディアセンター)、前川和子(堺女子短大)、山野美贊子(帝塚山学院大非常勤)、渡邊隆弘(神戸大図書館)、吉田暁史<11名>

1.ネットワーク環境下における分類等の役割

・記述目録法の華々しい変化と比べて、分類法・件名法の世界は歩みが遅い。電子資料やネットワーク情報資源といった新たな形態の資料が出現しても主題が変化するわけではないこと、コンピュータ環境に対応する実績は既にありネットワーク環境といえどもその延長上にあること、等から、理論面・実務面とも急激に変化する必要がなかったのだといえる。
・Web情報に対する商用検索サービスは主題検索にいくつかの示唆を与える。Yahoo!のカテゴリはDDCを凌駕する6万程度の項目数を持つと言われ、キーワード検索全盛の中にあっても、分類検索に一定の必要性があることを示している。ただし、Yahoo!のカテゴリは線形配列を意図しないため「分類記号」を用いないという違いがある。また、キーワード検索は単語単位の事後結合検索が一般的であるが、Googleの「フレーズ検索」など「句による検索」にも有効性がみられ、事前結合手法の一定の必要性を示唆しているのではなかろうか。
・近年の分類研究はWeb情報への適用に大きな力点が置かれており、ファセット化された分類表に注目するものもある。また、サブジェクトゲートウエイではDDC等を大規模に適用する事例もある。
・Web情報にLC件名標目表を適用する事例もある。膨張拡大により複雑化したLC件名の統語論的規則を簡素化したFAST(Faceted Application of Subject Terminology)も提唱されているが、使用意図に曖昧なところもあり、明るい見通しがあるとは言い難い。

2.各分類表の動向

・NDCは新訂9版(1995)以後顕著な動きがなかったが、今年に入ってJLA分類委員会が新体制となり、10版に向けて始動している。
・UDCはデジタル版であるMRF(Master Reference File)の刊行が最近の顕著な動きである。各国語版が出ているが、日本語版も2002年に刊行された。
・CC以来の分析合成型一般分類表といわれるBC2は、1977年に刊行を開始しているが、21世紀に入るも未だに完結せず、8分冊が2005年以降に持ち越されている。

3.DDCの改訂動向

・DDCは、内容面・管理面双方でのメンテナンス態勢の充実、国際化対応、MARC21への採用、といった面で大きな利点を持ち、国際的にも広く採用されている。
・1989年の20版では、音楽(780)が全面改訂された。DDCでは全面改訂をComplete revision、細区分を変更するような主要改訂をExtensive revision、用語・注記・若干の追加程度の改訂をRoutine revisionと呼ぶ。全面改訂は各版1〜数箇所で行われ、ファセット化が図られる。また、20版では各国の協力の下に地理表の改訂が行われた。
・1996年の21版では、見出し語の改善、相関索引の改善(合成記号を含む記入数の増加)、標準細目と本表中の細区分との不一致是正、米国・キリスト教への偏向箇所を国際的に適合するよう改善、等の措置がなされた。ファセット化を取り入れた全面改訂は、行政(350-354)、生命科学(560-590)の2箇所で行われた。またCD-ROM版の提供も開始された。
・2003年に刊行された最新の22版では、全面改訂は行われないなど、比較的小幅な改訂となっている。継続的な更新作業、いくつかの分野で新記号の追加、相関索引の追加、などが行われている。補助表については、7(Group of persons)を削除することとなった。なお、22版の刊行にあたっては、米国だけでなく英・加・豪の英語圏各国からの委員を加えた国際助言委員会が組織され、用語、地理、法律、政党、言語、文学、時代区分といった分野で改善があった。

(記録文責:渡邊隆弘)