TOP > 月例研究会 > 2004 > / Last update: 2008.1.1

整理技術研究グループ月例研究会報告

目録規則再構築の動向−まとめ−

渡邊隆弘(神戸大学図書館)、吉田暁史(帝塚山学院大学)


日時:
2004年12月18日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立中央公会堂2階第6会議室
発表者 :
渡邊隆弘氏(神戸大学図書館)、吉田暁史氏(帝塚山学院大学)
テーマ :
目録規則再構築の動向−まとめ−
出席者:
蔭山久子(帝塚山大図書館)、柏田雅明(帝塚山学院大図書館)、川崎秀子(佛教大)、河手太士(大阪樟蔭女子大図書館)、土戸千晶(国立民族学博物館図書室)、中川正己(松山大)、中村恵信(大阪府立大)、古川肇(近畿大)、堀池博巳(京都大学術情報メディアセンター)、前畑典弘、山野美贊子(帝塚山学院大非常勤)、山本千恵(国立民族学博物館図書室)、吉田、渡邊、他1名<15名>


目録規則の抜本的な再構築につながる動向について、2004年度の活動のまとめを行うとともに、特に資料区分概念の再検討について考察した。

1.2004年度整理技術研究グループの活動(省略)

2.各目録規則の動向(2003年〜)

・ISBDでは2004年に、ISBD(G)の改訂(用語の変更等)、ISBD(ER)改訂案(用語の変更、第3エリアの不使用など)のWorld Wide Reviewが行われた。2005年にはISBD(CM)、ISBD(NBM)など多くの規則の改訂作業が予定されている。
・AACRに関しては、Tom Delseyが合同改訂委員会からエディターに委嘱され、2007年の"AACR3"刊行を目指して作業中である。序説の改訂、典拠コントロールの概念取り入れ、用語の改定、資料区分に関する問題の解決、などが課題とされ、抜本的な再構成が進められている。*参照:2004年4月月例研究会(古川氏)
・NCRに関しては、2004年に継続資料及び和古書・漢籍について改訂案が出され、近く刊行の予定である。12月の検討会では、章単位の規則改訂は一段落し、次は全体の抜本的な改訂に向かう必要があるとの認識も示された。*参照:2004年9月月例研究会(吉田ほか)

3.目録規則の構造的枠組みの再検討

・目録におけるシンタックスとセマンティックスの整理について、主に米国議会図書館による活動が行われている。分離による相互運用性の強化を図るものである。MARCデータを忠実にXML変換するMARCXMLなどのほか、他のメタデータスキーマにも応用可能とされるMODS(Metadata Object Descripiton Schema)の提唱も行われている。*参照:2004年3月月例研究会(吉田)
・パリ原則(1961)を見直し新たな「国際的な目録原則の共通セット」を作る「国際目録法原則」の策定作業がIFLAによって開始されている。
・AACRをはじめとして、(章ごとの改訂ではなく)目録規則全体を再編成しようという動きがある。多くの規則で章立ての基礎となってきた資料区分概念の再検討と、カード目録時代からの伝統を引き継ぐ標目部分の見直し(典拠コントロールを明確化するなど)が特に大きな課題である。

4.IFLA IME-ICC(国際目録規則のための専門家会合)の動向(省略)

*参照:2004年6月月例研究会(渡邊)、同10月月例研究会(川崎氏ほか)
5.AACR2の資料区分とDelseyの改訂案 ・AACR2の章立てをなす一般資料区分(GMD)の区分特性は、公式には物理媒体(2章〜11章)、刊行形態(12章:継続資料)、階層関係(13章:分出)とされている。
・中心をなす2章〜11章の区分を子細に検討すると、キャリアの物理的媒体種類というよりは、内容の記録様式種類という色彩が濃いと認められる。例えば地図、録音物、映画、静止画像など、いずれも媒体を問うものではない。キャリアの物理的媒体は、特定資料区分(SMD)が受け持っている。ただし、新たに登場した電子資料はすべての記録様式を包含する余地があり、大きな問題となっている。
・Tom Delseyは2003年に、以下の章構成提案を行っている。
参考:Delsey T. "Class of materials concept and GMDs"
http://www.ddb.de/news/pdf/papers_delsey.pdf
Content Description(内容)
Chapter 1 General rules
Chapter 2 Texts
Chapter 3 Music
Chapter 4 Cartographic resources
Chapter 5 Graphic resources
Chapter 6 Three-dimensional resources
Chapter 7 Sound recordings
Chapter 8 Moving image resources
Chapter 9 Data
Chapter 10 Software
Chapter 11 Mixed content resources
Technical Description(キャリア)
Chapter 12 General rules
Print media (printed texts, music, maps, and atlases)
Micrographic media
Graphic media (drawings, photographs, filmstrips, etc.)
Tactile media (braille, etc.)
Three-dimensional media (models, artefacts, etc.)
Recorded sound media
Moving image media (films and videorecordings)
Digital media (digital texts, music, maps, images, etc.)
Mixed media
Mode of Issuance(刊行様式)
Chapter 13 Finite Resources
Chapter 14 Continuing Resources
Unpublished Resources(非出版)
Chapter 15 Manuscript resources
Chapter 16 Unprocessed sound recordings, films, and videorecordings
Analytics and Multilevel Description(粒度)
Chapter 17 Analysis
Chapter 18 Multilevel description
・この案には、「刊行様式は完結・継続だけの区分でよいのか」「電子資料は内容区分か、キャリア区分か、あるいは両方か」「手書き資料は非出版物と断定できるか」「複製資料と唯一資料の区分、複製物か否かの区分はどうなるのか」「全体−部分関係は内容とキャリアの2つの場合があるのではないか」「記述対象を1つのレコードで記録するのか複数に分けるのか」といった点に疑問がある。

6.資料の区分原理

・キャリアによる:印刷資料(紙媒体)、レコード盤、フィルム、磁気媒体...
・記録内容の種類による:文字(テキスト)、音声、静止画、動画、複合様式。メッセージの意味内容ではなく、メッセージ形式に関する区分。
・記録の様式による(活字の種類、ファイル形式の種類など)
・記録の様式による(デジタルかアナログか)
・刊行形式による(逐次刊行物か単行資料か)
・内容の確定性による(確定しているか、更新されるか)
・出版物か否かによる
・複製資料か唯一資料かによる
・複製物か否かによる

7.資料に関する記録のイメージ

・内容部分とキャリア部分に分けて2つのレコードを作成し、組み合わせるイメージを考えた。書誌的記述の各エリアを両レコードに振り分ける。FRBRの「表現形」「体現形」のイメージに似ているが、階層関係ではなく両者を並列的にとらえる点が異なっている。
・内容部分の記録には、第1エリア:タイトルおよび責任表示(著作としての抽象的なタイトル等)、第2エリア:版(改訂版等)、第3エリア:資料特有、第6エリア:内容的な全体−部分関係、第7エリア:内容部分に関する注記、を記載する。
・キャリア部分の記録には、第1エリア:現物資料のタイトル等、第2エリア:大活字版等、第3エリア:資料特有(現状の規則にはなし)、第4エリア:出版・頒布等、第5エリア:形態的記述、第6エリア:キャリアの全体−部分関係、第7エリア:キャリア部分に関する注記、第8エリア:標準番号、を記載する。

(記録文責:渡邊隆弘)


研究会終了後、地下1階食堂「中之島倶楽部」で忘年会が開かれた。
研究会および同日夜点灯されたOSAKA光のルネサンス風景など
写真