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情報組織化研究グループ月例研究会報告(2010.10)
中国と韓国における目録をめぐる動向
小島浩之(東京大学経済学研究科資料室) 高橋菜奈子(国立情報学研究所)
日時:
2010年10月23日(土) 14:00〜17:00
会場:
キャンパスポート大阪
発表者 :
小島浩之氏 (東京大学経済学研究科資料室)、高橋菜奈子氏 (国立情報学研究所)
テーマ :
中国と韓国における目録をめぐる動向
出席者:
稲葉洋子(神戸大学)、江上敏哲(国際日本文化研究センター)、大谷周平(琉球大学)、大西賢人(京都大学)、北真治、久保山健(大阪大学)、塩野真弓(京都大学文学研究科図書館)、篠田麻美(国立国会図書館関西館)、高城雅恵(大阪大学)、田窪直規(近畿大学)、中村友美、堀池博巳(大阪芸大非常勤)、松井純子(大阪芸術大学)、松山巌(玉川大学)、村井正子(日本アスペクトコア)、村上健治(大阪大学)、山本知子、吉田暁史(大手前大学)、渡邊隆弘(帝塚山学院大学)、小島、高橋<21名>
共催:
目録規則研究会(科学研究費基盤研究(C) 課題番号22500223 研究代表者:渡邊隆弘)
発表1.韓国における目録をめぐる動向(高橋)
1.1.韓国目録規則の変遷
1947年に書名基本記入方式をとる『東書編目法』が編纂されたが、朝鮮戦争等によって目録規則への歩みは中断され、『韓国目録規則』(KCR1)が誕生するのは1964年のこととなる。KCR1はパリ原則(1961)を反映した著者基本記入方式の規則で、1966年に『修正版』(KCR2)が出された。
1983年に『第3版』(KCR3)が刊行された。KCR3は、AACR2(1978)への準拠やISBD区切記号法の採用など国際的潮流に従う一方で、記述と標目を独立させた「記述ユニットカード方式」を採用した。3篇から成る構成が企図され、まず記述・標目指示篇が刊行されたが、残る標目篇、排列篇は出版されなかった。
1990年に誤字訂正レベルの修正を行った『第3版修正版』(KCR3.1)が刊行された(日本語訳あり)。この検討過程で、印刷資料のみを対象とすることの限界や機械可読目録への対応要請などが認識され、『第4版』(KCR4)につながっていく。
1.2.KCR4の概要
KCR4は2003年に冊子体及びCD-ROMとして刊行された。総則、記述総則と、資料種別ごとの11章から成り、アクセスポイントに関わる事項は総則で触れられるのみである。
「編纂報告」では、「目録の機能」(検索と集中)を明示したこと、画像資料と映像資料を統合したこと、責任表示の数の制限を撤廃したこと、「標目」の代わりに「アクセスポイント」の語を用いること、基本標目及び統一標目の考え方を適用しないこと、等を特徴としてあげている。
1.3.典拠コントロール
基本標目、統一標目の概念をもたず、アクセスポイントが等価に扱われることは、KCR4の大きな特徴である。Kim Tae-Sooは、検索・集中のいずれにおいても基本標目・副出標目の区別は不要であり、機械可読目録においてはアクセスポイントの拡大が望まれるとし、アクセスポイント群を優先順位を付けずに管理して識別番号によって書誌レコードとリンクする著者名典拠コントロールシステムを提唱した。
KORMARCでは、AACR2に則って著者名典拠を作成している。大学図書館では数大学が典拠コントロールを行っているが、そのフォーマットや記述ルールは統一されていない。いずれも、典拠レコードの活用というよりは再検索に用いられているようである。
1.4.FRBR、RDAと韓国目録界
韓国国立中央図書館作成のKORMARCは、図書館への普及率が98%に達する国内標準MARCである。2007年ごろからKORMARCへのFRBRモデル適用実験研究がいくつかみられる(FRBRモデルを紹介する論文は2003年ごろからみられる)。
LC/OCLCの開発したFRBR化アルゴリズムを適用する実験が行われているが、基本標目を持たないこと等がネックとなってそのままの適用は難しく、異なったアルゴリズムが必要との認識にいたっている。
2010年に刊行されたRDA(Resource Description and Access)について、KCR4との比較研究や、KORMARCへの適用を検討する研究などが出てきている。Jane Choは、RDAとKCRとの関係検討、RDA適用評価の準備、典拠コントロールに対する実質的対策、目録教育内容の改善、などの課題整理・問題提起を行っている。
韓国図書館協会目録委員会は、現在のところKCR4の課題を整理している段階である。また韓国国立中央図書館では、電子図書館システム構築が一段落し、これからKORMARCのFRBR化や著者名典拠ファイル活用の検討がなされるようである。
参考資料
高橋氏配布資料 (PDF)
発表2.中国における出版と目録の標準化(小島)
2.1.はじめに
歴史研究者の立場からの文化史的考察を行いたい。
近代の目録標準化は、出版界と図書館界との関係の上に立っている。出版情報の統制、出版工作(事業)の標準化が図書上の情報源の標準化をもたらし、目録規則の標準化につながっていく。特に、情報源としての「版権頁」に注目する。
なお、中国語では「著録」がdescription、「編目」がcatalogingに当たる。「目録」は、古代以来の書物の世界で分類・校訂等をも含む営為を表す語ととらえられる。
2.2.版権頁の成立と図書館界
「版権頁」とは、著作権説明、タイトル、責任表示、出版・発行(頒布)・印刷に関する諸事項などの情報を掲載したページで、「版本記録頁」とも呼ばれる。日本の図書の「奧付」にあたるが、位置は巻末とは限らず、標題紙裏等に位置することも多い。
出版統制を目的とした版権頁の義務づけは、清末の「大清印刷物専律」(1906)で行われ、中華民国成立後の「出版法」(1914)等に継承された。
中華人民共和国成立後の1950年、『大公報(上海版)』に図書館員による2編の文章「図書館が出版界に望むこと」「標題紙と版権頁について」が掲載された。前者は、内容に合った書名をつけること、翻訳書の原著者名・原書名の表記を統一すること、などの10項目を挙げ、版権頁にも言及している。後者はこの問題に絞り、標題紙や版権頁が欠けているために重要な情報が不明となっている図書が多く見られることなどを指摘している。
2.3.出版工作の標準化
1950年代に入ると出版政策は、革命・軍事のためから生産・建設のためへと転換され、計画経済の観点から標準化が進められるようになった。1954年には「関于図書版本記録的規定」が公布され、版権頁の記載内容が定められている。しかし、その後の文化大革命時期には出版事業に関わる標準化活動は休止状態となり、1970年代になって再始動となった。
1986年にISBNに準拠した「中国標準番号」が、1990年にはISO1086-87に準拠した「図書書名頁」が、それぞれ国家標準規格(GB)として制定されている。中国ではこの種の標準は、まず強制力を持ったGB規格として制定され、普及の後はGB/T規格(推薦規格)として維持されることが多い。
「図書書名頁」規格の制定は、「図書在版編目」(CIP)データを規格・制度化する上で情報源の標準化を企図したものである。この後、中国では10年を費やして情報源の標準化とCIPデータの実用化にこぎつけた。
2.4.目録規則の標準化
近代中国書を対象とする目録規則は、1930年頃に刊行された『中文図書編目条例草案』(劉国鈞編)に遡ることができる。戦後もいくつかの動きがあるが、本格的な標準化は文革後となった。
1979年に書名基本記入方式の『中文普通図書統一著録条例』が刊行された。しかし1980年代に入ると、本格的な目録規則(編目規則)に向かうのではなく、ISBDに準拠した「著録規則」群(いわゆるGB3792系統)の制定に力が注がれた。
『中国文献編目規則』(CCR)の刊行は1996年であり、この時期の制定にはIFLA北京大会の開催が影響している。その後2005年に『第2版』(CCR2)が刊行されている。なお、これらの規則は中国書を対象としており、洋書については別途『西文文献著録条例』が刊行されている。
CCRやGB3792系統での「規定の情報源」には若干の変遷がみられる。例えば、「タイトルと責任表示に関する事項」について、版権頁はCCRでは規定の情報源に含まれていたが、CCR2では含まれない。
FRBRの中国語版の刊行は2008年であり、現時点ではまだ国内への紹介段階である。
参考資料
小島氏配布資料 (PDF)
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