情報組織化研究グループ月例研究会報告(2012.5)

ISBDの現在・過去・未来−ISBD統合版を中心に

松井純子(大阪芸術大学)


日時:
2012年5月26日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立弁天町市民学習センター
発表者 :
松井純子氏(大阪芸術大学)
テーマ :
ISBDの現在・過去・未来−ISBD統合版を中心に
共催:
目録法研究会(科学研究費基盤研究(C) 課題番号22500223 研究代表者:渡邊隆弘)
出席者:
石田康博(名古屋大学)、井原英恵(神戸大学)、尾松謙一(奈良県立大学付属図書館)、川崎秀子(佛教大学)、河手太士(静岡文化芸術大学図書館)、久保恭子、塩野真弓(京都大学人間環境学研究科図書館)、塩見橘子、柴田正美、出澤茂(放送大学)、田窪直規(近畿大学)、田中伸尚(ブレインテック)、田村俊明(紀伊國屋書店)、中村恵信(神戸松蔭女子大学)、中村友美、灘井雅人(園田学園女子大学)、福西敏文、堀池博巳、前川和子(大阪大谷大学)、益本禎朗(神戸大学)、松林正己(中部大学)、村井正子(日本アスペクトコア)、山野美贊子、横谷弘美(大手前大学)、和中幹雄(大阪学院大学)、松井<26名>

1.はじめに

2011年7月、ISBD(International Standard Bibliographic Description:国際標準書誌記述)統合版 (consolidated edition)がIFLAから刊行された。その主な特徴は、従来の資料種別ごとのISBDを文字どおり統合し一つにまとめたことと、エリア0の新設(従来の8エリアを9エリアに拡張)にある。
本発表では、ISBD統合版に至るISBD改訂の一連の流れを振り返り、統合版の概要と特徴を紹介するとともに、エリア0の趣旨と意義を検討した。また、ISBDの今後にも着目した。

2.ISBDの過去

(1)1969〜1980年
1969年のIMCE(国際目録専門家会議)を契機に、標準書誌記述作成のためのワーキンググループ(以下WG)が設置された。以後1980年までに、ISBD(G:総合)の他、資料種別ごとに7種類のISBDが作成された(計8種類)。
(2)1977〜1992年
1977年、IFLA目録分科会は、すべてのISBDを5年間固定し、その後改訂を行うと決定。そしてISBD改訂委員会が設置され、同委員会は1981年に改訂計画を作成。これにしたがって順次、改訂版が策定された(第一世代レビュープロジェクト)。
(3)1992〜2004年
1992年、FRBR研究グループの設置に伴い、ISBD改訂作業を延期すると決定。ただしISBD(CF:コンピュータファイル)からISBD(ER:電子資料)への改訂は実施された(1997年)。1998年にFRBRが刊行されると、ISBD改訂グループ(以下、RG)は改訂作業を再開。IFLA目録分科会は、RGに対しISBDとFRBRとの整合性の確保を求めた。ISBDはFRBRに一致させるべく改訂された(第二世代レビュープロジェクト)。2004年、ISBDエレメントのFRBRへのマッピングの結果が公表された。
(4)2002〜2007年
ISBD RGは2002〜03年に「シリーズ」「将来方向」「資料表示(Material Designation)」の三つの研究グループ(以下、SG)を相次いで設置し、ISBD改訂についての課題を検討した。とりわけ将来方向SGでは統合ISBDについて、資料表示SGでは複合資料媒体におけるGMD(一般資料表示)の使用について検討された点が重要である。
このプロセスの中で、下記の意見が示された。
  • GMDには資料の内容表示と表現の表示とが混在しており、明確さよりも混乱の度合いが大きい。
  • GMDの現在の位置はタイトル情報の論理的な順序を妨げている。GMDが記録の冒頭にあることは重要。現在のように任意(optional)であるべきではない。
  • GMDは目録利用者にとってearly warning deviceである(2003年第1回IME ICC(国際目録規則専門家会議)、2004年IFLA世界大会などでの意見)。
2005年、将来方向SGにおいて、ISBD統合への合意がなされ、統合の準備作業が開始された。またGMDを本タイトルの後ろから別の位置に移動することなども議論された。
一方、資料表示SGは、GMDの位置、資料内容の識別と明確化、GMDとエリア3、5、7の名称について議論し、同年のIFLA世界大会で、「内容/キャリア」または「内容/メディア」表示のための必須エリアの設定を提案した。
2006年、ISBD予備統合版(Preliminary consolidated edition)草案がワールドワイドレビューに付されたが、GMDの位置と内容は変更されないままであった。2007年、ISBD予備統合版が刊行された。

3.ISBDの現在(2007年〜)

予備統合版の刊行後まもなく、ISBD RGは予備統合版の更新を決定した。そして2005年のIFLA世界大会で検討以来、棚上げ状態であったエリア0を2008年、ワールドワイドレビューに付した。
エリア0は「内容形式とメディア種別エリア(Area 0: Content Form and Media Type Area)」であり、従来のGMDを廃止して、early warning deviceとして記述の冒頭に位置づけたものである。
2009年、エリア0の条文を、記述の実例集とともにIFLAのWebサイトに公表した。2011年、 ISBD統合版を刊行し、「全体事例集(Full ISBD Examples)」をWebサイトに公表した。

4.ISBDの未来

近年、ISBDは図書館以外の情報コミュニティとの互換性を重視して、ISBD/XML SGを新たに設置し、ISBD RDF/XMLスキーマの構築など、Web環境におけるISBDの適応を目指している。

当日プレゼン資料
スライド(PDF 341KB)

(記録文責:松井純子)


前川和子さんご退職記念の会

日時:
5月26日(土)17:40〜
会場:Lago di Blu(弁天町)
参加者:
出澤茂、笠井詠子、柏田雅明、川崎千加、川崎秀子、河手太士、木下みゆき、久保恭子、光斎重治、志保田務、塩見橘子、柴田正美、杉本節子、杉山誠司、高畑悦子、田窪直規、田中伸尚、田村俊明、中村恵信、浜田行弘、福西敏文、堀池博巳、前川理女、松井純子、松戸宏予、松林正己、村上泰子、森美由紀、山下信、山田伸枝、山野美賛子、山本貴子、和中幹雄