情報組織化研究グループ月例研究会報告(2013.2)
新しい日本目録規則(NCR)へ
原井直子(国立国会図書館;日本図書館協会目録委員長)
- 日時:
- 2013年2月23日(土) 14:30〜17:00
- 会場:
- キャンパスポート大阪(大学コンソーシアム大阪)
- 発表者 :
- 原井直子氏(国立国会図書館;日本図書館協会目録委員長)
- テーマ :
- 新しい日本目録規則(NCR)へ
- 共催:
- 目録法研究会(科学研究費基盤研究(C) 課題番号22500223 研究代表者:渡邊隆弘)
- 出席者:
- 池須安希(大阪音楽大学図書館)、石井俊寛(ブレインテック)、石田康博(名古屋大学)、片岡寛子(梅花女子大学)、川崎秀子(佛教大学)、故選義浩、忽那一代(京都大学)、田窪直規(近畿大学)、田中伸尚、中村健(大阪市立大学)、中村友美、堀池博巳、前川和子、前川敦子(神戸大学図書館)、松井純子(大阪芸術大学)、松山厳(玉川大学)、村井正子(日本アスペクトコア)、山田伸枝、横谷弘美(大手前大学)、渡邊隆弘(帝塚山学院大学)、和中幹雄(大阪学院大学)、原井<22名>
日本図書館協会(JLA)目録委員会は、2013年2月21日に「『日本目録規則』改訂の方針と進捗状況」を公表した。今回はこの文書の内容を中心とした発表であった(ただし、発表内容は個人の立場であるとの断りがあった)。
1.改訂作業の開始から現在まで
- 目録委員会では2009年度後半からNCR改訂に向けた議論を開始し、2010年9月に「『日本目録規則』の改訂に向けて」を公表、館界から意見を募った。
- その後、2010〜2011年度の間は「目録の作成と提供に関する調査」の処理にも時間を割いたが、2012年度からは改訂検討作業が委員会活動の中心になっている。2010年段階から基本的方針の変化はなく、これを踏まえて検討作業を行っている。
2.NCR改訂の背景と基本方針
- ウェブ環境の進展によって、情報やデータの使われかたは大きく変化した。特に、データが単一のシステムを超えて様々な状況で用いられることが増えており、図書館界の書誌データもOPACなどの図書館システムでのみ用いられるとは限らない。
- 目録規則はデータの「作りかた」の規則だが、「使われかた」を抜きには考えられない。厳密な検索にも、より広い世界での緩やかな活用にも対応でき、資料のもつ潜在的利用可能性を最大限に顕在化できる規則が必要である。
- 具体的には、資料の多様化への対応、典拠コントロールの拡充、リンク機能の実現が求められる。この点で、FRBRモデルが重要な基盤となる。FRBRは現行の目録と大きく異なったことを言っているわけではないが、新しい情報環境に対応した視点を据えていることがポイントである。
- 新たな枠組みを作る一方で、過去のデータとの継続性も不可欠である。
- RDAが刊行され実装も目前となっているが、日本においては、FRBRモデルに基づきながら日本で現実に使用可能な規則が必要である。国際標準に合わせつつ、日本で必要な規定を盛り込んだ、実務的で平明な規則を目指している。
3.改訂の主な内容
- エレメントの定義を規定範囲とし、記載順序や区切り記号は扱わないことを原則とする。付録では、区切り記号を用いた表現や各種フォーマットへのマッピングの例示を行う予定である。
- 書誌レコードの基盤は体現形とし、現行の目録との継続性を確保する。一方で著作・表現形・個別資料に対するエレメントも含み、各エレメントがどの実体に対応するのかを明確にする。
- 現行の注記は、精査の上、なるべくエレメント化する。
- 典拠コントロールを重視し、特に「著作に対する典拠形アクセス・ポイント」(現在の統一タイトル)に関する規定を大幅に増強する。また、アクセス・ポイントだけでなく、典拠レコードのエレメントについての規定も検討する。
- RDAにおける「関連」の考え方と詳細な扱いを検討する。書誌階層は関連の一種と扱うが、従来どおり基礎レベルの設定を行う。構成レベルの記述規則の強化もはかる。
4.改訂作業の進捗状況
- 「総説」「資料に関する記録」「典拠形アクセス・ポイント」「関連」「付録」の全体構成を予定している。このうち「総説」「付録」は具体的検討が進んでいない。
- 「資料に関する記録」の部は、(1)資料種別ごとの構成は取らない、(2)体現形に関するエレメントをまとめて置き、その後に著作・表現形・個別資料に関するエレメントを配置する、(3)資料種別の規定を体現形に関する記録の前に置き、標準番号・入手条件の既定を体現形に関する記録の先頭に置く、(4)その他のエレメントはISBDの順序で配置する、(5)注記のうちエレメント化可能なものは各エリアに振り分ける、等を仮に決めて進めている。
- 表現形の版と、体現形の版を分けてエレメントとすることを考えている。
- 資料種別は、表現種別(一般表現種別と特定表現種別から成る)、機器種別、キャリア種別の3種で、素案を公表した。
- 「典拠形アクセス・ポイント」の部は、資料(著作〜個別資料)に対するもの、行為主体(個人・家族・団体)に対するもの、主題に対するもの、という構成を予定している。参照、典拠レコードについても扱う。現行の「標目指示」は扱わない。
- 「関連」の部は、「資料に関する記録」「典拠形アクセス・ポイント」で規定された事項を、関連という観点から再構成する予定である。
- 現在の改訂作業を当面は継続して「第一次案」を策定し、懸案事項とともに公表したいと考えているが、具体的な時期は未定である。
発表者からは、今回の内容は確定したものではなく、この機会に多くの意見をいただきたいとの希望が述べられた。質疑応答では、「記録」という語の意味(「記述」との関係等)、区切り記号など出力時の規範の扱い、音楽資料の扱い、「版」の位置づけ(表現形・体現形のどちらに位置づけるか)、標準番号を先頭に配置する意味、資料種別の構成と用語、など多くの点で論議があった。
(記録文責:渡邊隆弘)
- 参考:
- 「『日本目録規則』の改訂に向けて」「『日本目録規則』改訂の方針と進捗状況」
http://www.jla.or.jp/committees/mokuroku/tabid/184/Default.aspx#ncr