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情報組織化研究グループ月例研究会報告(2018.5)

「ディスカバリーサービス公共図書館版について」

宮田祥一郎氏(図書館流通センター関西支社)、古永誠氏(EBSCO Information Services Japan


日時:
2018年5月26日(土)14:30〜17:00
会場:
大阪学院大学
発表者:
宮田祥一郎氏(図書館流通センター関西支社)
古永 誠氏(EBSCO Information Services Japan)
テーマ:
ディスカバリーサービス公共図書館版について
出席者:
荒木のりこ(日文研)、飯野勝則(佛教大学)、梶原達生(大阪府立図書館)、久慈友美(吹田市立図書館)、久保山健(大阪大学)、古賀崇(天理大学)、小西利枝、高畑悦子(佛教大学非常勤講師)、竹村誠(帝塚山大学)、田村俊明(紀伊国屋書店)、服部繁彦(岡崎女子短期大学)、花田謙一(EBSCO)、平山永一(紀伊国屋書店)、福田一史(立命館大学)、堀池博巳、松井純子(大阪芸術大学)、和中幹雄(大阪学院大学)、宮田、古永<19名>

 発表は,前半:宮田氏,後半:古永氏に分けて行われた。

1.ディスカバリーサービス公共図書館版の展開(宮田氏)

 宮田氏は、公共図書館が課題解決型図書館として機能したか、と疑問を呈した。そもそも最新情報は図書として刊行されていないことが多く、OPACと参考図書で蔵書を紹介する従来型のレファレンスは、Googleなどのネット情報に比較して、付加価値のある情報を提供できていない。一方、大学図書館は商用データベース、電子ジャーナル、機関リポジトリ、OPACなどの電子リソースを統合検索する仕組み=ディスカバリーサービス(以下DS)の活用により、教員や学生が付加価値のある情報に手軽にアクセスできるようになった。公共図書館でも、DSの導入によって、市民がGoogleと同じ感覚で付加価値のある情報に手軽にアクセスできる環境を整えたいと企画した。
 TRCは、2017年6月〜2018年1月、EBSCO社と共同で、DS公共図書館版の無料トライアルを実施し、関西を中心に11館が参加した。検索対象の主なメタデータはNDL-OPAC、雑誌記事索引、J-STAGE、ジャパンナレッジ、聞蔵Uビジュアル、ブリタニカ・オンライン・ジャパン、医中誌Web等であった。
 このトライアルの趣旨は、①利用者がどのリソースにアクセスしているかを調査し、OPAC以外のリソースの利用頻度を探る、②利用者の課題解決につながる情報が図書にあるか図書以外にあるかを探り、図書館のリソースの持ち方を検証する、の2点である。トライアル終了後の2018年4月から正式リリースし、長崎市立図書館が導入に至った。
 トライアル参加館のアンケート調査結果も紹介され、Google同様の検索画面で使いやすいと評価された。今後、TRCのデジタルアーカイブシステムであるADEACのメタデータを搭載するなど、公共図書館向けメタデータを充実させるとともに、インターフェイスを、市民がさらに使い易いようにカスタマイズする予定とのことであった。

2.EBSCO Discovery Service(古永氏)

2.1 EBSCO Discovery Service(EDS)とは

 EBSCO社は、2010年から大学図書館・研究機関向けにDS大学図書館版をリリースしている。これをベースに、EDSの概要や検索機能等について古永氏が説明された。DSと統合検索システムとの違いは、各種オンラインデータベースや電子ジャーナル等のメタデータを事前に収集し、インデックスを構築する点にある。これにより各種リソースを個別に検索した場合の検索速度や検索結果の並び替えの問題などが改善される。また、EDSでは深層Web(有料コンテンツ)も検索対象となる。

2.2 EDSで実現できること

2.3 EDSのコンテンツ

 海外の著名なオンラインデータベースとオープンアクセス・コンテンツ、国内の主要データベースを検索対象としている。ADEACやCiNii Books等、日本語コンテンツの追加・拡充を図る予定である。

2.4 EDSの検索エンジン

検索結果を表示する際の機能として、1) Relevance Ranking、2) Value Rankingがある。1) はすべてのリソースを同一のアルゴリズムで適合度(関連度)の高い順に優先順位を判定するものである(検索語がタイトルよりもシソーラスの語彙と一致するほうが優先順位が高いなど)。2) は利用動向調査にもとづくカレント重視、特定タイプの文献の格下げ、文献の長さによる優先順位の判定、などである。
 また、多言語検索機能により日本語の複雑な特性にも対応できる。

2.5 カスタマイズと他システムとの連携

 各大学や機関のニーズに合わせたカスタマイズ、カーリルと連動させた近隣の公共図書館との連携、さらにリンクリゾルバ(Full Text Finder)も組み込まれている。

2.6 公共図書館でのトライアル

3.おわりに

 質疑応答では、契約形態として有料コンテンツをDSに含めた形態はできないか?、DSのコンソーシアム契約の可能性などの質問が出された。
 紙数の都合により、EDSの機能等を詳細に記録することはできなかったが、多くのコンテンツと優れた検索機能の活用により、DS公共図書館版が課題解決ツールとして定着することが今後期待される。

(記録文責:松井純子 大阪芸術大学)