整理技術研究グループ月例研究会報告
セマンティックWebと資料組織法:勉強会報告
河手太士、松井純子
- 日時:
- 2006年7月29日(土) 14:30〜17:00
- 会場:
- 大阪市立浪速人権文化センター
- 発表者 :
- 河手太士氏(大阪樟蔭女子大学図書館)、松井純子氏(大阪芸術大学)
- テーマ :
- セマンティックWebと資料組織法:勉強会報告
- 出席者:
- 蔭山久子、川崎秀子(佛教大)、倉橋英逸、佐藤毅彦(甲南女子大)、田窪直規(近畿大)、田村俊明(大阪市立大学術情報総合センター)、中川正己(松山大)、堀池博巳、村井正子(日本アスペクトコア)、山本祥子、山野美贊子(帝塚山学院大非常勤)、吉田暁史(大手前大)、渡邊隆弘(帝塚山学院大) 河手、松井 <15名>
グループ有志で行っている勉強会(文献輪読)の内容(2006年1〜7月)について、発表された。
1.図書館とセマンティックWebの接点:最近の文献
以下の3論文が紹介された。
- Campbell & Fast "Academic Libraries and the Semantic Web"
J. of Academic Librarianship. 30(5), 2005
セマンティックWeb技術の利用により、多様なカテゴリーの情報源の相互運用性が向上し、書誌情報に伝記情報・著作情報等を組み合わせた新たな図書館目録の可能性が広がる。
- Ferran [et al.] "Towards Personalization in Digital Libraries through
Ontologies" Library Management. 26(4/5), 2005
今後の電子図書館においてはパーソナライゼイション・システムが求められるが、利用シナリオで用いられる実体の関係を整理したオントロジーを構築することにより、異なるサービスの統合などの可能性が広がる。
- Fox "Cataloging Our Information Architecture" OCLC Systems &
Services. 21(1), 2005
拡張性・柔軟性を持っているファセット分類の考え方が、オントロジー構築・管理に有用である。
2.オントロジー基礎論
主に溝口理一郎『オントロジー工学』オーム社, 2005 に沿って、オントロジー基礎論におけるいくつかの考え方について発表された。
- オントロジーには「ライトウエイト」「ヘヴィウエイト」の2種がある。後者は知識ベースのオントロジーで、概念間の関係性の厳密な管理が要求される。分類階層(Taxonomy)を包含するが、単なる概念階層ではない。
- 概念を表す「クラス」に対して所属する個物を「インスタンス」と捉えるが、この関係は個物の「本質属性」に基づいて認定される。例えば職業は、個々の人間の本質属性とはみなせないのでこの関係にあたらない。よって「教師」等の職業はクラスではなくロール概念ととらえたほうがよい。
- オントロジーを考えるうえで「表現」の捉え方が重要であり、様々な考え方がありうる。表現自体、表現される内容(設計物、製造物)、生成される具体物、表現行為(演奏など)といった様々な要素があり、これらを体系づけて整理する必要がある。
- 「もの」に対応する「コンティニュアント(連続物)」と、「プロセス」に対応する「オカーレント(生起物)」という考え方があるが、突き詰めていくと両者は表裏一体で不可分のものである。
- 「もの」であっても「プロセス」であっても、個物は時空間を特定しない「インスタンス」関係と、それを特定する「オカーレンス」関係の2段階で、現実の時空間に位置づけられる。
- 概念をis-a関係の上位にたどる「一般化」、全体部分関係の上位にたどる「マクロ化」、具体物(インスタンス)から概念をたどる「抽象化」、の違いに留意が必要である。
→
勉強会の詳細記録
(記録文責:渡邊隆弘)